夏には欠かせないスタミナ料理!
アンニョンハセヨ、プサンナビです。突然ですが、今日は何の日かご存知ですか?え、今日?えーと、海の日は昨日終わったし、オリンピックの開会式はまだ先だし ……。なんて、お考えのみなさま。今日は、韓国で「伏日(ポンナル)」と呼ばれる、ちょっと特別な日なんです。伏日は、暑い夏を乗り切るために、ポシンタンやサムゲタンなどの料理を食べる日。日本でいえばちょうど土用の丑の日にウナギを食べるような感覚の日です。夏の暑さはまだまだこれから。夏バテしてぐったりなんてことがないように、栄養のあるものをしっかりと食べて暑い夏を乗り切ることにしましょう。
伏日(ポンナル)とは 伏日(ポンナル)と呼ばれる日は1年に3度あります。その3度の伏日を総称して三伏(サムボク)と言い、最初の伏日を「初伏(チョボク)」、2度目の伏日を「中伏(チュンボク)」、3度目の伏日を「末伏(マルボク)」と呼びます。初伏は夏至から数えて3度目の庚(かのえ)の日、中伏は4度目の庚の日、末伏は立秋後初めての庚の日にあたり、この時期が1年の中で最も暑い時期とされています(2004年の三伏は、初伏が7月20日、中伏が7月30日、末伏が8月9日)。その暑さをしのぐための方法として考えだされたのが、栄養のある料理を食べるということ。三伏を象徴する料理には、ポシンタン、サムゲタンなどがあげられています。三伏の日には、全国のポシンタン、サムゲタン専門店が大にぎわいになります。普段は並んでまで食事をしない韓国人も、この日ばかりは大行列を作るほど。中には整理券を出して、行列を整理する店もあるほどです。
ポシンタンとは三伏を象徴する料理のひとつ、ポシンタン。数ある韓国料理の中でも、これだけ評価のわかれる料理も珍しいのではないでしょうか。大好物だと満面の笑顔で語る人がいるかと思えば、逆に身震いして嫌う人もいる。その理由は、やはり「犬肉」を材料に使うということでしょう。ポシンタンとは犬肉を使った鍋料理のこと。漢字では「補身湯」と書き、「補身」は、栄養のあるものを食べて身体を健康にすること。「湯」はスープ、または鍋料理のことを表します。「い、犬……?」と眉をひそめる方もいらっしゃるかもしれませんが、これも韓国文化の一側面ということで、ご理解頂ければと思います。
それではポシンタンを、さらに詳しく紹介しましょう。ぱっと見た限りでは、韓国らしい赤くて辛そうな料理としか見えません。黙って出されれば、犬肉だとは気づかないくらいです。特徴としては、におい消しの目的でエゴマの葉、エゴマの実などがたくさん入れられるということ。犬肉独特のクセに対抗するため、唐辛子、ニンニク、ショウガなどの香辛料もたっぷりと入れられます。
犬肉は主に足の肉と、お腹の肉を使います。足の肉は若干繊維質で、クニクニした歯触り。お腹の肉は皮ぎしのゼラチン質がトロトロとける、柔らかい口あたりです。慣れない人にはちょっと食べにくい部分ですが、皮に近い部分ほど通が好むとされ、またスタミナになるとも言われています。肉そのものの風味は、やはり牛とも、豚とも、鶏とも微妙に異なる感じ。多少のクセはあるものの、特に食べにくいというほどでもなく、犬の肉だと緊張して食べてはみたものの、案外普通で拍子抜け、という話もよく聞くくらいです。
ポシンタンの歴史
ポシンタンの歴史を正確にさかのぼるのは難しいですが、少なくとも朝鮮時代の文献には数々の犬肉料理が記録として残されています。1670年頃に書かれた『飲食知味法』には、犬肉の汁、腸詰、串焼きなどの料理が紹介されており、また、1849年に書かれた『東国歳時記』には、三伏の季節食としてポシンタン(当時の記述では狗醤)の名が掲載されています。暑気を退け、虚弱を補強する料理という記述もあり、夏の暑い時期にポシンタンを食べるという習慣が、古くからのものであることがよくわかります。
朝鮮時代の呼び名としては「狗醤(クジャン、ケジャン)」という言葉が使われていました。20世紀に入って犬肉忌避の風潮が広まるにつれて、直接的な名称を避けて「補身湯(ポシンタン)」という名前が使われるようになり、現代ではその名前も避けて「栄養湯(ヨンヤンタン)」、「四節湯(サチョルタン)」などの名前が使われています。北朝鮮では、犬の肉に甘みを感じるとして、タンコギタン(甘い肉のスープ)の名称を使用しています。
サムゲタン
ポシンタンの代替料理季節を代表する料理ではあるものの、犬を食べるにはちょっと抵抗がある……。という人にはサムゲタンをおすすめします。サムゲタンは若鶏の内臓を抜き、お腹の中にもち米や、ナツメ、朝鮮人参、ニンニクなどを詰め込んで煮込んだ料理。ポシンタンとならび、三伏の季節料理として広く食べられています。ポシンタンを出す店には、犬肉を食べられない人のために、必ずサムゲタンがメニューに並んでいます。ポシンタンを食べたい人に付き合って店に入り、自分はサムゲタンを食べるという人も少なくないようです。
ユッケジャン
また、三伏と関連するイメージは薄いですが、ユッケジャン(牛肉と野菜を入れた辛いスープ)も、ポシンタンの代替料理のひとつです。朝鮮時代に、宮廷でポシンタンを食べられない人のために開発されたのが始まり。ポシンタンの旧称である狗醤と同じ調理法で、肉だけ牛肉にかえて作ったため、肉狗醤(ユッケジャン)という名前がついたそうです。
釜山でポシンタンを食べるには釜山で犬肉といえば、亀浦市場(クポシジャン)が有名です。市場内には犬肉を専門に扱うエリアがあり、ポシンタンの専門店もあります。ただし、市場内には解体されて内臓を見せている犬や、檻に入れられた犬も並んでいるため、普通の人であればかなりの衝撃を受けるかと思います。そのあたりは重々ご検討ください。そのほかには、温泉場に有名なポシンタン専門店があり、黒ヤギで有名な金井山の山城マウルでもポシンタンが食べられます。
賛否両論のある犬肉食の文化。いろいろな見方があるとは思いますが、これもまた韓国文化の一側面ととらえて頂ければ幸いです。嫌いな方にはすすめませんが、興味のある方はぜひ試してみてください。まだまだ続く暑い夏が、少しだけしのぎやすくなるかもしれません。以上、プサンナビでした。
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記事登録日:2004-07-20