十二支神が護る新羅の英雄墓
アンニョンハセヨ、ナビです。慶州の西を流れる兄山(ヒョンサン)江を越えて、新羅の英雄が眠る墓まで行ってきました。新羅の三国統一に多大なる貢献をした将軍は、高速バスターミナルから約1.5km。市内を見下ろす小高い丘の上で12匹の動物に護られながら眠っています。王家の人物以外でこれだけ立派な墓に埋葬される人はそう多くないとのこと。いったいどんな人物であったのか。訪ねてみましょう。
キムユシン将軍墓へのはるかなる道
新羅の英雄に会ってみたい。墓を護る十二支神の像を見てみたい。そう思ったナビはまず観光案内所に向かいました。ガイドブックの地図を見ると、将軍墓は市内から少し離れている様子。バスの路線を教えてもらおうと思ったのです。ところが。「金?信将軍墓まで行くバスはありません。高速バスターミナルから歩いて1.5kmくらいです」と観光案内所のお姉さんに言われてしまいました。歩いて1.5 km。往復3 km。歩けない距離ではありませんが、今日はほかにも行きたい場所がたくさん。徒歩をあきらめて自転車をレンタルすることにしました。
高速バスターミナル前から西川(ソチョン)橋を渡り、ライオン像を右手に曲がる。そこからは金?信将軍墓に行くために作られた専用道路なのでひたすら道なりに進みます。快適に自転車をとばしていると、そこは……。見事なのぼり坂でした。小高い丘の上に建てられた将軍墓。やむなく自転車を押して歩くハメになりました。新羅の英雄。お目にかかるのもなかなか楽ではないです。
坂の脇には十二支神が護る……街灯?キムユシン将軍墓に向けて自転車を押して歩くナビ。路肩に印象的なものを発見しました。それは金色に輝く街灯。街灯の根元あたりに十二支神の絵が描かれているではありませんか。もしやここが英雄の眠る墓? あわてて写真を撮りましたが、当然そんなはずはありません。道なりに続く街灯にはすべて十二支神の絵が彫刻されていました。キムユシン将軍墓になぞらえて、街灯にまで十二支神の姿を刻む。これはなかなか粋な坂道です。ほかにも慶州の街灯には瞻星台(チョムソンデ)を模したものなどがあります。機会があったら探してみてください。
困難の果てにやっとこさ将軍墓到着
坂道の向こうに入口が見えました。いやはや、なかなか骨のある坂道でした。高速バスターミナルから1.5 km前後とはいうものの、徒歩で30分近くはかかりそうです。自転車に乗っても15分前後。車だとあっという間なのでしょうが……。
入口に「崇武殿」という案内の碑があり、右方向に矢印が伸びていますが、金?信将軍墓はこちらではありません。駐車場の向こうに見えるチケット売場を目指しましょう。
キムユシン将軍ってどんな人?
将軍墓に到達する前に、少しキムユシンという人物について触れておきましょう。キムユシン将軍は新羅が半島統一を成し遂げた7世紀ころに活躍をした人物。唐と連合して百済を滅ぼしたときの宰相がこの金?信です。また後に新羅の第29代国王となる金春秋(武列王)を後ろから支え、王族出身でない金春秋を王位に推挙した人物としても知られています。将軍でありながら王族にも劣らない荘厳な墓を築いた金?信将軍。それだけの地位にいた人物なのでしょう。
墓を護る十二支神像チケット売場から階段をあがり左手へ。興武門を抜けて道なりに大きく右へカーブしていくと、欄干に囲まれたキムユシン将軍の墓が見えました。広い階段をのぼっていくと両脇に碑石がふたつ。中央の床石は新しいものですが、この両脇の碑石は朝鮮時代に作られたものだそうです。
墓に近づいてみると、ありました。ありました。欄干の向こうに石に刻まれた十二支神像の姿がありました。将軍墓を囲んで確かに十二体。年月を重ねるうちに姿がはっきり見えなくなってしまったものもありますが、確かに十二支の表情をしています。この十二支神は頭が動物、体は人間の形をしています。守護神の場合はたいてい鎧で身を包んでいるものですが、このキムユシン将軍墓の十二支神は平服に帯刀という珍しい姿をしています。この十二支神はそれぞれの方位に置かれているので、南側にあたる正面から見ると蛇と辰が見えます。ぐるっと回って自分の干支を見つけるのも楽しいですね。
キムユシン将軍の顔を見てみたい
三国統一期の英雄の顔を拝むことができるかと思ったのですが、ここには墓しかありませんでした。キムユシン将軍とは一体どんな顔をしているのでしょう。そう思って調べてみると、慶州駅から北へ向かった隍城(ファンソン)公園というところにキムユシン将軍像があることがわかりました。興味のある方はぜひこちらも訪れてみてください。馬にまたがった勇壮なキムユシン将軍の銅像が置かれています。
キムユシン将軍墓からは墓の周囲を護る像だけでなく、ろう石に刻まれた護石もいくつか発掘されました。慶州国立博物館に行くと金?信将軍墓から発掘されたろう石の十二支像を見ることができます。慶州のあちこちに名前が轟く金?信将軍。彼を訪ねる観光コースも面白そうです。以上、ナビがお届けしました。