皇龍寺址(慶州)

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歴史がある、逸話もある、何もない空白地

アンニョンハセヨ、ナビです。慶州市内から少し離れたところにある東洋最大の寺院址を訪れたところ、なーんにもない空地で思わず呆然としてしまいました。なんにもなし。見渡す限りの荒野。どこまでも続く地平線。キャッチボールをするにはよさそうですが、観光目的でやってきた身としては困り果てるばかりです。しまった、来るんじゃなかった。思わず頭を抱え込みかけたのですが、なんとこのなにもない空地が歴史的に重大な価値を持った場所だったのです。
荒涼とした空地に看板だけがむなしくささる
これらの写真は慶州の美しい山並みを写した写真ではありません。芝生に覆われた地面を撮影したものです。この一面に広がる荒野がかつての大寺院、皇龍寺址です。総面積2万坪という広大な敷地はかつて東洋最大の寺院でした。553年に建設が始まり、完成が694年。長い年月をかけて築き上げた巨大な寺の姿は、すでに面影すらありません。発掘調査を経て建物の位置関係だけはわかっており、そこに建物があったことを指し示す看板だけがむなしくささっています。
黄龍の降臨で造られた皇龍寺
皇龍寺が建設されたのは553年。新羅の第24代国王、真興(チヌン)王の時代に建設が始まりました。当時の王宮である半月城から少し東に離れたところに、新しい宮殿を建てようとしていたところ突如として天から黄龍が現れました。それを聞いた真興王はただちに宮殿建設を中止し、寺院を作ることに変更したそうです。国家的な規模の寺院建設となり、この後4代の王にまたがって建築作業がすすめられました。645年の九層木塔完成をもって皇龍寺も完工。その後600年間新羅最高の国家寺院として存在していましたが、1238年に蒙古軍の侵攻によって焼失し、現在まで再建はされていません。
新羅三宝のひとつ九層木塔
少し小高くなった場所に建物の基礎部をあらわす石が縦横に並べて埋められています。その中央にはごろんと大きなまるっこい石が置かれており、この石が九層木塔を支えた心礎石になります。この上に巨大な九層の木塔が建てられていました。
九層木塔が建てられたのは645年。新羅の第27代国王、善徳(ソンドッ)女王の時代です。『三国遺事』によれば唐の国に留学に行った慈藏(チャジャン)という僧侶が神のお告げを聞いて、善徳女王に九層木塔の建設を説いたといいます。善徳女王は百済より当時最高の工匠と言われた阿非知(アビジ)を呼び寄せ、2年間かけて九層木塔を完成させました。現在はこの阿非知の記念碑が九層木塔の跡地のすぐそばに建てられています。九層木塔には当時の新羅を取り囲む9つの外国(日本、中華、呉越、托羅、鷹遊、靺鞨、丹國、女狄、?貊)から国を守るという意味が込められていました。
新羅三宝のもうひとつ金銅三尊丈六像
九層木塔の向かいには金堂(本堂)が建てられていました。この金堂には金銅三尊丈六像という巨大な仏像が本尊として奉られていました。金堂址に目をやると切り株のような石が並んでおり、この石が台座として仏像を支えていました。高さが一丈六尺にもなる巨大な釈迦如来三尊像の左右には十大弟子像、神将像2具が並べられていました。
国立博物館に行こう!
壮大な歴史があるとはいえ、現実にはいくつかの建物跡が残るだけの皇龍寺。ここに九層木塔が、あそこに金堂が、と想像を膨らませるのにも限界があります。皇龍寺を見たら、ぜひ慶州国立博物館まで足を伸ばしてみてください。国立博物館の仏教美術室2階には皇龍寺の60分の1サイズ復元模型が展示されています。実際の跡地とイメージを重ねると、頭の中に雄大な当時の姿が描き出されることでしょう。復元模型のほかにも皇龍寺からの出土品も見ることができます。
皇龍寺址のそばに置かれる謎の石
皇龍寺址に隣接する発掘研究所の敷地を抜けていくと、同じく広い空地に出ます。この空地の中にも塔の基礎部のような石がポツンと置かれています。この石の四方には四天王像が描かれており、周囲から建物跡も発掘されましたが、いまだにこの石がどのような建造物だったのかはわかっていません。
ただ眺めてきました。何もない空白地を眺めてきました。かつては大きな寺院がそびえたっていたのでしょうが、今はなにもありません。九層木塔、金銅三尊丈六像と新羅三宝がふたつも集まった寺院。現在まで残っていたらさぞかし素晴らしい眺めだったことでしょう。歴史の中で失われた寺院の姿はいまや空想の中にしか存在しません。ぷつんと途切れた歴史の断面を目の当たりにして。以上、ナビがお届けしました。

記事登録日:2002-11-13

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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

スポット登録日:2002-11-13

スポット更新日:2012-06-22

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