文禄・慶長の役の激戦地をたどる
アンニョンハセヨ、プサンナビです。「釜山の歴史の街」と強調される東莱(トンネ)。でも、実際に訪れ、歴史を感じるためには具体的にどこに行けばいいのかはっきりと見えてこないというちょっと困った場所でもあります。そんな、東莱エリアの中で、散歩を楽しみながら、歴史歴情緒にも浸りたいという方に最適なのがこの「東莱邑城」。それほど時間も掛けず、東莱が釜山の歴史の街といわれる理由を感じることのできるスポットです。
東莱邑城とは
1387年に修築されたと見られる東莱邑城は1592年の「文禄・慶長の役」の際には、日本軍の標的となり、東莱府使の宋象賢(ソン・サンヒョン)を中心に軍・官・民が一体となり激しい闘いを繰り広げた山城です。その戦いの後、放置されたままだったものを1713年、国の関門である東莱の重要性を考え、以前の城よりも規模を大きく修理し作られました。この時作られたものが現在私たちが目にすることのできる邑城の元となります。東莱邑城は、忠烈祠(チュウリョルサ)の裏にあたるマアン山、そして、現在の東莱の市街地を一部含む形で都邑全体を城壁で囲んで外敵を防ぐ構造になっていました。しかし、日本の統治時代、その姿はすっかり変貌してしまいます。もともと、東莱邑城には東西南北4つの門、そして人生門があり、 特に、南門は国の関門となる重大なもので、その姿も雄大で、外からやってきた者を驚嘆させたとも言われていました。しかし、日本統治時代「市街地計画」という名目で、西門から南門にいたる平地の城壁は取り除かれ、南門から東門にいたる城壁も一般の民家が占めるようになり、現在は山地にだけ残る城壁と3つの将台、北門のみを見ることができます。(釜山市では現在も他の門のあった場所に表示をするなどしています)
東莱邑城見学コース
この東莱邑城を訪れる最適なコースは、地下鉄1号線、明倫洞(ミョンニュンドン)駅近くにある「東莱郷校」がスタート地点となります。
<東莱郷校>
地下鉄1号線、明倫洞(ミョンニュンドン)駅2番出口を出て、歩くこと約5分、古めかしい建物に遭遇することができます。これが、朝鮮時代の公立中等学校の役割をした教育機関「東莱郷校」です。孔子を始めとした韓国、中国の著名な儒教家が祭られた「大成殿」など祭祀を行う空間で構成され、儒教が一番の教えだったというその時代の教育がよく反映されています。
<西将台(ソジャンデ)>
この「東莱郷校」の向かって一番右端の門を見てみると、隣に細い坂道があります。その坂道が東莱邑城へつながっています。ゆるやなか坂道が山道に変わりはじめ、その山道を登って行くと東莱邑城の案内板も見えます。さらに5分ほど行くと、西将台(ソジャンデ)に到着です。(東莱郷校→西将台 徒歩約7分)
<北門>
西将台(ソジャンデ)のある辺りから白い城壁がちらっと姿を現します。その城壁にしたがってすすんでいくと、目の前に壮大な城壁が目に入ります。城壁の先に見える門が北門となります。まるで真正面から敵を迎えうち、国を守ろうとしているかのような堂々たる様子に感嘆することでしょう。
(西将台→北門 徒歩約10分)
<北将台(パクチャンデ)>
北門を後にし、城壁に沿ってさらにすすんで行くと、100段以上はある白い階段が見えてきます。この階段を上るきるのがなかなかの困難ですが、これを上りきった所に、東莱邑城内の将台の一つである、北将台の姿を見ることができます。
北将台は1737年に、佐川洞一帯にあたる甑山(チュンサン)内に建てられ、その20年後、現在のこの地に移されたといわれています。しかし、その当時のものは無くなり、現在私たちが目にすることができるのは1999年に復元されたものです。将台の中でも一番高さが高く、城の場内を見渡すことができるようになっていたといわれる北将台、現在も、この北将台からはアシアード競技場、福泉古墳群、忠烈祠の裏山にある東莱邑城の東将台などを見渡すことができます。
(北門→北将台 徒歩約7分)
<3・1独立運動記念碑>
北将台を見学し、山を降りる形で歩いていくと、体育公園があり、道が分かれています。右方向の道をすすむと正面に三角形の記念碑が見えてきます。これが1919年全国的に起こった「3・1独立運動」の記念碑となります。ソウルから始まった、「3・1独立運動」は、釜山で大規模な展開を見せました。特に東莱はその運動が激しかった場所とも言われています。
(北将台→記念碑 徒歩約2分)
さきほどの分かれ道に戻り今度は左手方向に。あとはずっと下り坂が続き、ゴールとなります。ここはちょうど福泉博物館の古墳群の裏手にあたるところになるので、ここまで来たついでに博物館も見学し、どっぷり歴史の世界に浸ってみるのはいかがでしょうか?
東莱はその昔釜山の政治的中心地だったという言葉は耳にしたこともあるはず。それを言葉だけではなく、実際に目にすることで、この東莱が置かれていた歴史的位置づけを知ることができる場所であり、見学した後、そこからさらに知りたいこと、感じることがあふれ出し、歴史を好奇心を刺激してくれる場所でもあります。東莱邑城だけではなく、博物館なども見学し、釜山の歴史をじっくりと味わってみてください。以上、プサンナビがお伝えしました。