前から行きたいと思っていた「聞慶セジェ」(慶尚北道聞慶市)に行ってきました。
東ソウルバスターミナルからバスで2時間、聞慶バスターミナルに到着します。そこから市内バスに乗り換えて10分ほどのところに「聞慶セジェ」の入口があります。
「聞慶セジェ」というのは、朝鮮時代に青雲の志を抱いた若者が都を目指して越えて行ったり、また科挙合格の嬉しい知らせを故郷で待つ大切な人に伝えるために越えて来たりした峠道です。
嬉しい知らせを聞く――。「聞喜」という昔の地名が聞慶の由来になっています。
第一関門(主屹関)から第二関門(鳥谷関)までは3kmあります。
この区間は平坦な土の道なので、散歩コースにぴったりです。時々裸足で歩いている人を見かけます。
第一関門を入ってすぐの所に、韓国で最大規模(7万㎡)を誇る時代劇撮影場・「聞慶セジェオープンセット場(入場料2000ウォン)」があり、朝鮮時代の街並みや光化門などが再現されています。訪れた時、現在放映中の「三銃士」というドラマの撮影直前で、朝鮮時代の衣装をまとった俳優さんやスタッフが大勢待機していました。
第二関門から第三関門(鳥嶺関)までは3.5kmです。
「アリラン碑」の先を進むと、曲がりくねった「チャンウォン及第(首席合格)の道」がしばらく続きます。就活の時にこの道を通っていたら、人生変わっていたかも…と後悔まじりの身世打鈴(笑)。
この区間はなだらかな坂道が続きます。休みながら歩いても、さすがに最後は疲れました。
第一関門から第三関門まで、歩いている時間は2時間ほどです。この6.5㎞に及ぶ道の両側には史跡や渓谷、奇岩、滝、鬱蒼とした林などがあって退屈しません。一部ではすでに紅葉が始まっています。「韓国の美しい道100選」に選ばれている所以です。
途中に何軒か休憩所があります。その中の1軒に寄って、聞慶名産のオミジャ茶とパジョンで遅い昼食をとっていると、お店の女性が外に出て来てサックスを吹き始めます。
2曲目に、わたしの方を見ながら大きな声で「次は日本の曲ね」と言って、「恋人よ」を演奏してくれます。彼女の思いがけない心遣いと、雑木林の中を流れる哀愁を帯びた調べに目頭がちょっと熱くなります。
第三関門の鳥嶺関をくぐると、そこは忠清北道です。きれいに植栽され、記念碑が建つ広場になっています。その中を緩やかな下りとなる科挙の道が続きます。
遠い昔、夢を追い夢をかなえようと、この道を通って行った若者たち。歴史の彼方からよみがえってくる彼らの熱い心に思いを馳せます。
風が冷たくなってきたので、そろそろ戻らなくては…。周囲を見回すともう人の姿はありません。急に心細くなって、元来た道を早足で急ぎます。復路は一瀉千里の1時間40分でした。
この日は聞慶温泉に入って疲れをとり、市内で宿泊です。
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