ディープな釜田市場をナビけんさんと回る
アンニョンハセヨ、K・F・Cです。K・F・Cは韓国の市場を訪ねるのが大好きです。前回のチャガルチ市場探検に続き、今回は釜田洞にある釜田市場を潜入リポート。広大な敷地に網目のような路地が行き交う巨大迷路のような市場です。野菜がずらり、魚がずらり。肉に乾物、漢方薬。ありとあらゆる食材が集まる総合市場。またこの市場では実に不思議な食材をたくさん見つけました。スーパーでは絶対に見ることのできないディープな世界。市場ならではの光景です。韓国の食卓をのぞくK・F・Cの市場探検。釜田市場に突撃です。
釜田市場とは
若者の集う街西面(ソミョン)駅から隣の釜田洞(プジョンドン)駅に至る一帯。2つの建物とその周辺に広がる数えきれないほどの店を総称して釜田市場といいます。釜田市場が生まれたのは1970年代。朝鮮戦争時に避難してきた人たちが仮住まいした建物をもとに、1973年3月から工事を始め1974年9月に竣工。同年12月に市場として新しく生まれ変わりました。この市場は釜山、慶尚道地域最大の高麗人参専門街があることでも有名。高麗人参のみならずたくさんの漢方薬、健康食品が買える場所として広く知られています。
ナビけんさんのディープな誘い
「八田氏(K・F・C)をぜひ釜田市場にご案内したいです。」
「釜田市場ですか。」
「釜山の中でも非常にディープな市場なのです。」
「ディープですか。それは面白そうですね。」
「僕も恐くて最深部までは攻め込んだことがありません。」
「そんなにですか。」
「そんなにです。1度踏み込んだら戻って来られないかもしれません。得体の知れない不気味な食材が大量に押し寄せてきます。はっきり言って恐いです。」
「なるほど。それは行かねばなりませんね。」
「ぜひ一緒に行きましょう。」
夏の終わりのジリジリ暑い午後でした。プサンナビのウェブマスターとして活躍するナビけんさんとK・F・Cの2人は、ディープな釜田市場に足を踏み入れたのであります。得体の知れない不気味な食材が大量に押し寄せてくる市場。それはそれは勇気のいる市場探検でした。緊張感に負け、市場に入る前に昼食と称してテジクッパッで焼酎を一杯やってしまったことをまず白状しておきます。
唐辛子・ニンニク連合軍によるディープな先制攻撃
釜田市場に足を踏み入れてすぐ、大群で襲ってきたのが唐辛子とニンニクの連合軍でした。韓国料理には欠くことの出来ない2大香辛料です。巨大倉庫のような店にうず高く積まれた大量のニンニク。茎ごとぐるぐるっとまとめられたものもあれば、外皮だけ剥いで袋詰めされたものも見えます。ザルの中には一粒ごとにされたニンニクもありました。ニンニク山の前にはべたっと座って皮をむくおばちゃんたちが。この量を考えると気の遠くなる作業です。
唐辛子だって負けてはいません。赤いの青いの太いの細いのさまざまな種類が売られています。ザルに入った青唐辛子は一見同じものにも見えますが、値札をみると微妙に違うようす。
「おばちゃん、こっちの唐辛子はそっちの唐辛子と何が違うの?」
「それかい? そっちはテンチョっていって辛いやつだねえ。こっちのはチョンチョ。テンチョよりは甘いよ。」
「これは何ですか?」
「カリコチュ。日本にもたくさん輸出してるよお。」
テンチョは別名チョンヤンコチュとも呼ばれる大変辛い唐辛子。K・F・Cは見かけた瞬間から脱兎のごとく逃げ出します。これを韓国人に食べさせられて何度涙したことか。30分は口の中に氷を詰め込む羽目になります。チョンチョは普通の青唐辛子、カリコチュは日本で言うシシトウのことです。唐辛子とならんでピーマンなども売られていました。
「ナビけんさん。さすがに唐辛子もディープですねえ。」
「いや、こんなのはまだまだ序の口です。」
ディープに細分化される肉屋の店頭
大量の野菜を眺めながら歩いてゆくと、肉屋ストリートに出ました。赤いライトに照らされて巨大な肉の塊がぶらさがっています。看板に書かれた値段を見ていくと……。
スープ用(米国産)600g:3000ウォン
LAカルビ 600g:5000ウォン
サンジョク(串焼き)用ロース肉(米国産)600g:4000ウォン
プルコギ用豚肉 600g:1500ウォン
サムギョプサル用豚バラ肉(デンマーク産)600g:2800ウォン
プルコギ用ロース肉 600g:4000ウォン
なるほどやっぱり600 g(1斤)ずつ売るんですねえ……。ってちょっと待った。なんかむちゃくちゃ安くないですか? プルコギ用の牛肉600gで4000ウォンって、日本円で約400円ですか? 100gいくらですか……。って電卓叩いてみたら、ひょえー。グラム66円じゃないですか。安っ!
牛肉部門を通り過ぎると豚肉、鶏肉部門が現れました。各自簡単に自己紹介などしていただきましょう。
「どうもみなさんこんにちは。わたくし豚であります。
えーと、左から豚の皮、腸、肺、肝臓、心臓です。栄養満点ですよ。」
「はじめまして。あたしアタマ取られちゃいましたけど鶏です。
左から、丸鶏、砂肝、モミジ(足)、その向こうが親戚のウズラさんです。お腹のあたりの黄色いのがタマゴになります。おいしいですよ。」
「ナビけんさん。だいぶディープになってきましたね。」
「いや、こんなのはまだまだ序の口です。」
ディープにうまそうなお惣菜と塩辛
肉屋ストリートを抜けるとおいしそうなお惣菜、そして塩辛などを売る店が立ち並んでいました。釜山よりも全羅道のほうで有名なカラシナのキムチ、各種塩辛、各種ティギム(テンプラ)。明太子もありました。明太子はもともと釜山が元祖。スケトウダラの卵の塩辛に改良を加えて作ったものが博多名物の辛子明太子です。スケトウダラの韓国語名がミョンテ(明太)。その釜山方言であるメンテが語源となったそうです。ちなみに韓国語ではミョンナン(明卵)、またはミョンナンジョッ。メンタイコでは通じません。あしからず。
「ナビけんさん。このへんはうまそうなディープですね。」
「いや、こんなのはまだまだ序の口です。」
ディープなクジラにK・F・Cもおののく
店の奥のほうでクジラの内臓をジャブジャブ洗っているおばちゃんを発見。脇のタライには輪切りになったクジラの胴体が積まれています。ツルツルの皮に包まれた肉厚の脂肪。そして血がしたたるような赤身。タライの輪切り肉を上手につなげると1匹になるんだろうなあ……と思わずリアルな想像をしてしまいます。あれをここにつなげて、こっちにもってきて……。あれ、でもクジラにしては小さくないですか?
「おばちゃん、これクジラ?」
「クジラだよ。」
「もしかしてイルカのほうじゃない?」
「そうだよイシクジラ(イルカ)。」
ああ、やっぱりそうだった。韓国ではイルカはクジラの一種。石のクジラという意味で、韓国語ではトルゴレ。クジラの名前で売られているけど実はイルカだったんですねえ……。その隣の店ではサメの腸が売られていました。魚もやっぱりディープだなあ……。
「ナビけんさん。ディープですか?」
「いや、こんなのはまだまだ序の口です。」
ディープな釜田市場にはおばちゃんたちの笑顔があった
この市場を歩いていて1番印象に残ったのがおばちゃんたちの笑顔でした。たいていの市場では商品の写真は撮らせてくれても人物の写真はまず断られます。ところが釜田市場のおばちゃんたちはとってもフレンドリー。写真を撮ってもいいかと尋ねると、恥ずかしがりながらもにこやかにポーズを決めてくれます。デジカメだったので、撮ってすぐに見せて差し上げると……。
「あらやだ。あたし綺麗に写ってるじゃない。がははは。ちょっとアンタ!アンタも撮ってもらいなさい。ほら。お兄ちゃん、隣のおばちゃんもっと美人なんだから。撮ってあげなさい。ほらほら。ぎゃははは。」
そこで隣のおばちゃんもパチリ。なんだなんだとやってきてのぞき込むおばちゃんまで出てくる始末で、K・F・C突然カメラマンに変身です。ということで以下は釜田市場の美人コンテスト。誰が1番美人かを選んでプサンナビまでメールしてください。結果は次回のK・F・C市場探検で発表します。(冗談)
ディープな釜田市場の最深部はどこなのか
「ナビけんさん。どこまで行けばディープになるんですか。」
こういう狭い路地に突入したいと思っていたんです。」
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「狭い路地の奥にいったいなにがあるのか。気にはなっていたのですが、1人では恐くてとても入ることができません。」
「なるほど。ディープですね。」
「ディープです。」
ナビけんさんとK・F・Cは人1人がやっと通れるような狭い路地に突入。店の裏側をのぞく路地にはダンボールが山積みになり、作業用の道具が散らばっています。恐る恐る釜田市場の最深部まで進んでいくと……。
「おや、もとの道に出てしまいましたよ。」
「ありゃりゃ? こ、こんなはずでは……。」
「ディープゾーン終了ですか?」
「ガーン」
「お疲れさまでした。」
「ガーン」
路地はただの路地でした。店の勝手口をつなぐ通路といってもいいかもしれません。ディープではありますが、とりたててなにがあるというほどのものではありません。ナビけんさんの考えすぎ。常に面白いネタを追い求めるウェブマスターの職業病でしょう。ナビけんさんは放心顔のまま口癖の「がーん」をつぶやきつつ、静かに釜田洞駅のほうに消えて行きました。実に悲しそうな背中でした。
釜田市場の探検を終えて
チャガルチ市場や国際市場のような観光地化された市場とは違い、釜田市場にはリアルな食文化の姿がありました。ディープというよりも俗化していない市場と言い換えたほうがいいかもしれません。その中で特に印象的だったのはおばちゃんたちの笑顔です。これはなんだ、あれはなんだとしつこいK・F・Cの質問にも親切に答えてくれました。釜田市場のおばちゃんたちに心より感謝したいと思います。
K・F・Cからのお願い
市場で商品の写真を撮る場合は一声かけるのがマナーです。きちんと許可をもらってから撮るようにしましょう。また人の写真を撮る場合も同様です。突然カメラを向けられたら誰でもいい気持ちはしません。マナーを守って観光をしましょう。
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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。
記事登録日:2002-10-04